北海道の中央部にそびえ立ち、北海道の屋根といわれる大雪山連峰。2000m級の山々が連なるこの連峰には、夏ともなると、その種類、規模共に日本一といわれる高山植物群が咲き乱れます。

カムイミンタラ、神々の遊ぶ庭
実は大雪山という個別の山はなく、山々が連なる連峰を総称して大雪山と呼んでいます。大雪山(たいせつざん)連峰は、日本最大の国立公園でもあります。神奈川県全域がすっぽりと入る広さといえば、その広大さがお分かりいただけるでしょうか。明治・大正期の文芸評論家で詩人でもある大町桂月は、「富士山に登って山の高さを知れ、大雪山に登って山の大きさを知れ」と語ったことでも知られます。
その昔、アイヌの人たちが「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と呼んであがめたこの山々には、短い夏を彩る、可憐な花々が咲き乱れます。今年も全国各地から多くの人が、花たちに会いに大雪山を訪れます。

ロープウェーを降りると目の前に
大雪山の高山帯は広大で、高山植物群落の規模と豊かさは比類のないもの。現在、高山帯に分布する植物は約250種類以上が記録されています。大雪山連峰で最も高い旭岳は標高2290m。緯度が高いため、本州の3000m級の山に匹敵する気象条件にあります。旭岳の中腹、標高1600mの姿見の池まではロープウェーで約10分。6月下旬から8月までは目の前に高山植物が咲き乱れています。池周辺には約1時間ほどの散策路もあり、ここからの眺望もすばらしく、まさに花々に囲まれた天上の散歩道。今年は花々の開花が例年より遅く、見ごろは7月中旬以降になりそうです。

高山植物の女王コマクサとウスバキチョウ
花々が美しさを競う高山植物の中でも、女王といわれるのが、コマクサ。他の群落から離れて誇らかに咲いています。コマクサは、もっとも厳しい環境にこそ生育する花。石ころだらけの中に美しい紅色の姿を見せます。地上の背丈は約10cm。2週間程度の短い花木を精一杯に生き、その間に受精し、結実して生きのび続けるのです。このコマクサを食べて成長するのが、日本では大雪山系にしか棲息していない高山蝶、ウスバキチョウ。約1万年前の氷河期に大陸から渡ってきたウスバキチョウは、その後、温暖な気候になったために大陸に帰れなくなり、寒冷な大雪山系の頂上付近に棲み残ったといわれます。薄く透き通るような羽に紅色の斑紋を持つウスバキチョウとコマクサとは、まるで貴公子と女王のような組み合わせ。7月中旬から下旬にかけて咲くコマクサの群落の中で、このすばらしいカップルの姿が見られるかもしれません。

*****************************************************************
●旭岳ビジターセンター
TEL:0166-97-2153 (FAX共通)

●層雲峡ビジターセンター
TEL:01658-9-4400 FAX:01658-9-4401


花の形が馬(コマ)の顔に似ていることから名付けられた「高山植物の女王」コマクサ

 


秋には一転して白い綿毛が風に踊る様は妖精を思わせるチングルマ

 


小さくて可憐な姿がサクラに似ているエゾコザクラは、高山植物の代表選手格

 


大雪山の1,500m以上の高地に生息する天然記念物のウスバキチョウ