丘のまちとして知られる美瑛町に、ユニークな美術館があります。司馬遼太郎の挿絵画家として知られる須田剋太と、人間国宝の陶芸家・島岡達三の作品を展示する「新星館」です。意外な場所での、著名作家の作品群との出会いに全国各地のファンが訪れるスポットになっています。

きっかけは、司馬遼太郎
ビート畑や豆畑が連なる丘の上に表れる、高さ31mにもなる石垣。この上に建つ、ひときわ目立つ建物は、新潟県の糸魚川市から移築した200年を経た民家。雄大な風景の中に建つ豪壮な美術館で見る芸術作品は、見る人の心をぐいぐいと惹きつけます。
新星館が開館したのは2001年。須田剋太の書や油絵など120点と、益子焼の人間国宝である島岡達三の陶器120点を展示。実は、この美術館をオープンするきっかけとなったのは、作家の司馬遼太郎でした。新星館の大島館長は、東大阪にあるお好み焼き屋「伊古奈」のオーナー。近所に住んでいた司馬遼太郎と親交があり、司馬遼太郎は美術に造詣が深い大島さんに須田剋太を紹介したのが、ことの始まり。大島さんは、東大阪に須田剋太の作品を展示する喫茶「美術館」を開館しましたが、それだけでは満足せず、本格的な美術館を建てる夢を実現すべく、日本各地を探し歩いて、環境の素晴らしさに惚れ込んだ美瑛町に新星館をオープンしました。

「街道をゆく」の挿絵画家、須田剋太
須田剋太は、戦前から高い評価を受けていた画家ですが、1980年代に、司馬遼太郎の「街道をゆく」の挿絵を描いて脚光を浴びました。その表現活動は、具象絵画、抽象絵画、書、オブジェ、挿絵と多岐に渡っています。新星館には、戦前の具象画もあれば、戦後すぐの抽象画や、「街道をゆく」で取り組んだガッシュも並んでいます。司馬遼太郎は、須田剋太を評して、次のように言っています。「須田剋太のすばらしさは、うまれたての幼虫のようにやわらかな感触をもっていることです。戦前この人が、3度も官展から特選をもらいながら、戦後その栄光をすてて在野に入ったことも、その感受性の一表現でした。」

人間国宝・島岡達三の陶器
もう一人、大島館長が30年以上の年月をかけて蒐集してきたのが、人間国宝でもある陶芸家、島岡達三の作品です。 島岡達三は大正8年(1919年)東京生まれ。柳宗悦や濱田庄司などが提唱、実践した民芸運動を受け継ぎ、世界を舞台に活躍しています。縄文象嵌に代表される独自の技法は、窯変、塩釉、赤絵など幅広い展開を生みだし、多くの人を魅了し続けています。平成8年(1996年)に人間国宝に認定されました。

新星館の3階には、美瑛の丘や十勝岳連峰を一望できるロビーがあり、ここから眺める風景も、また感動的。素晴らしい景観と200年を経た建物、心に響く芸術作品。ぜひ、新星館を訪れてみませんか。

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新星館
北海道上川郡美瑛町新星新星第五
TEL/0166-95-2888
開館期間/4月25日〜11月3日。期間中は無休
開館時間/AM10:00〜PM5:00
入園料/500円・小中学生300円